2006年06月01日

奇跡の都市

人間都市クリチバ―環境・交通・福祉・土地利用を統合したまちづくり
服部 圭郎


建築や都市の分野でも「サスティナビリティ(持続可能性)」が時代のキーワードとして語られるようになって久しいが、本書は、世界で最も成功したといわれる、ブラジル南部パラナ州にある人口160万人の都市クリチバの30年間におよぶ都市政策について紹介している。
クリチバの名が世界中に知られるようになったのは、1992年にリオデジャネイロで開催された世界環境会議において、その環境対策が表彰されてからである。
なにより世界各国の専門家を感嘆させたのは、クリチバという都市が、貧富の差や移民の問題、財政難などの数々の難問を抱えながら、ジャイメ・レルネル市長および都市計画研究所(イプキ)を核に、驚くほど短期間で都市環境づくりを成功させたことである。
本書では、「都市は人間のためにあるべき」という強い信念のもとに実現したさまざまな政策ー土地利用計画と交通計画の統合により、自動車に依存せずに移動が可能となるネットワークの構築、「ごみではないごみプログラム」「ごみ買いプログラム」「環境教育」をはじめとした環境政策、河川・公園が自然のままに整備された「花通り」「都市の色」プロジェクトなどーについて論じている。
奇跡の都市といわれ、市民の98%が「誇りを感じている」と答える都市クリチバのこうした政策の実現は、緻密な計画性と大胆な実行力を兼ね備えたリーダーとしてのレンネル市長の存在を抜きにしては語れないが、都市政策や都市開発にかかわらず、計画を机上の空論で終わらせない為に重要なのは、レルネル市長も語るように、それを実行する「課題解決能力」だといえる。
お金がないと悩む自治体は多いが、一番大切なことは地域の政策能力につきるだろう。クリチバの成功は、役所だけではなく、市民やNPOなどを含んだ地域全体として、政策課題にどう取り組んでいくのかということの重要性を顕著にあらわすモデルケースだ。

【目次】
はじめに
1 世界に先駆けた人間都市クリチバ
 クリチバという奇跡
 クリチバとはどのような都市か ほか
2 クリチバの都市政策
 土地利用政策
 緑地政策 ほか
3 クリチバの成功の秘訣
 市長の強い政治的意志
 都市計画専門家集団(イプキ)の存在 ほか
4 クリチバの将来展望
 大都市圏の問題
 郊外型ライフスタイルの進展 ほか
5 日本の都市は住み良くできるか
 都市計画不在の日本
 世界のクリチバから学ぶ ほか
おわりに


posted by 本のソムリエM at 23:00| 統合・統合理論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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